企業の生産性改善に向けたモチベーション

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日本の人口減少と労働力人口の推移

ピーター・ドラッカーは、「すでに起こった未来は、体系的に見つけることができる」と言い、人口構造、知識、他産業・他国・他市場、産業構造、組織内部の5つの領域の変化から見いだせるとしています。

特に人口構造について、「人口の変化は、労働力、市場、社会、経済にとって最も基本となる動きである。すでに起こった人口の変化は逆転しない。しかも、その変化は速くその影響を現す」と指摘しました。

内閣府の令和5年版高齢社会白書 高齢化の推移と将来推計では、2010年ごろをピークに日本の人口が減少に転じていることが分かります。合わせて65歳以上の人口割合を示す高齢化率が上昇し続けていくとされています。

また、三菱UFJリサーチ&コンサルティング「人手不足の現状と今後の展望」では、人口の推移からさらに踏み込んで労働力人口と就業者数の試算を提供しており、2022年をピークにその後10年で約1割減少していくとされています。

労働時間の減少

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの同レポートでは、労働時間の減少傾向についても分析されています。

パートタイムなどの非正規労働者が増えたことで、2000年代後半行こう、所定内労働時間は一般労働者を中心に減少幅が拡大傾向にあり、労働時間全体を押し下げています。

また、ワークライフバランスへの意識の高まり、働き方改革等を受けた有給取得率の上昇、育児や介護のために一時的に時短勤務を行う労働者の増加、そもそもの所定内労働時間の見直し、時給の増加による扶養内で働くパートタイム労働者の労働時間の抑制など、様々な要因が背景になっていると考えられ、労働者1人あたりの労働時間は今後も減少傾向が続くことが予測されています。

人手不足

雇用人員判断DIを見ると、コロナ中に一時的に人員不足が和らいだものの、2023年にはコロナ前と同程度に低下し、大幅な不足超過となっています。もともと2013年のアベノミクスから低下傾向になり、コロナ前の2019年には全産業で大幅な不足超過となっていましたが、2024年には当時を超える不足超過となっています。

日銀 雇用人員判断DI(全産業・実績) 2024年3月まで

厚生労働省「令和4年 雇用動向調査結果の概要」の産業別入職超過率を参照すると、建築業、電気・ガス・熱供給・水道業、運輸業、複合サービス事業などで特に人材の流出が起きていることが分かる。

令和4年 雇用動向調査結果(厚生労働省)より抜粋

労働生産性は頭打ちに

三菱UFJリサーチ&コンサルティング「人手不足の現状と今後の展望」によれば、近年労働生産性の伸びは徐々に鈍化している。このトレンドが続けば、労働生産性の伸びは2022年の前年比+0.4%から、2035 年には同+0.2%まで縮小していく。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング「人手不足の現状と今後の展望」より抜粋

現時点でも、労働生産性の伸びが1%を切る状態で今後大幅な伸びが期待できないとなれば、今後、企業の生産性を飛躍させていくうえで人手によらないアプローチが必要になってくる。

労働力にまつわる課題のまとめ

これまで、特に政府統計や三菱UFJリサーチ&コンサルティングのレポートを元に、労働力人口の推移や、人材確保の難しさ、労働生産性の向上の限界について見てきた。

これらを参考に、改めて労働力にまつわる生産性向上の課題と原因をまとめなおしたのが下図となる。近年、DXへの投資が求められているが、様々な理由から労働者の生産性向上だけに頼ることができないことが背景になっているといえる。